難治性バセドウ病につき甲状腺の全摘出手術をした話
2016/09/13
難治性バセドウ病につき、甲状腺の全摘出手術を受けました。
こういう内容を記事にするか悩んだけど。でも私自身、情報が少ないことで不安もあったから、どこかにいらっしゃるだろう似たような境遇の方の役に立てばと思った次第です。淡々と長いです、はい。
こちらの記事は2015年5月15日に執筆し、luuuing-web.comに掲載していましたがサイトの編成に伴い、当サイトに移行させることにいたしました。
2015.10.08_luuu
甲状腺の全摘手術は、例えば、腫瘍が出来てしまって取るしかなくて、という情報は目にすることはあっても、いわゆるバセドウ病(甲状腺機能亢進)で全摘しましたって言う体験談は、思いのほか少なかったんですよね(手術件数は多いはずなんですけどね)。
バセドウ病の詳しい説明はWikipediaでどうぞ。
※Wikipediaの治療の手術の説明に「甲状腺の一部を残して、切除する方法。」とありますが、先生曰く、最近は全摘出が一般的だそうです。再発をするリスクを負わない方がいいとか。状態によるとは思いますが。
手術まで
私がバセドウ病と診断されたのは2005年(愛知万博の開催年、今でこそメジャーな病名になったけど、このころはまだそれ程でもなかったんですよね)。初めは波があって日常生活も仕事も辛く、精神的にもキツイこともあったし、甲状腺特有の眼球が突出してくる「バセドウ病眼症(甲状腺眼症)」の症状も顕著だったので、写真に映るのも嫌になったり。落ち込むことも多くて結構大変でした。
でもこの4〜5年はようやく数値の上下がなくて。落ち着いてきたこともあって2011年にバセドウ病眼症の手術を受けることができたんです。(普通は片目ずつ違う日にやるところを、事情があって両目を一度に手術したものだから、なんと10時間もかかった!)いい流れだなと思っていたし、さーこれから薬でぼちぼち付き合っていこうかとなっていたんですよね、去年までは。
これがなぜか、去年の夏あたりから急激に数値が悪化してきた。悪化だけなら薬を増やせばいいのに、これまでにはなかった状態になっていた。薬での細かな調整が難しくなった(甲状腺には2つのホルモンがあって、その数値が同じ動きをすればコントロールできるけど、それぞれがバラバラに変動すうるようになってしまった)、ということ。他の治療方法として「手術も視野に入れてみてはどうか」と先生から提案を受けて、別の病院を紹介していただきました。
甲状腺は全摘しても支障ない(ホルモンを補う薬を飲み続ければ)とはいえ、そもそも人間に必要があって備わっているもののはず、きっと。命に関わる状態じゃないから、薬で何とかのらりくらりと頑張ることも不可能ではないし。取ったら、0(ゼロ)になってしまう。もう元にもどすことは出来ないんだから...。
もんもんと悩んで、紹介先の病院にしばらく行けなかった程の私が手術を決めたのは、自分の病気の性質(自己免疫の攻撃性)が2000人以上の患者さんを診ている先生が知る中でも、3本の指に入るほどの強さだったいうこと。「ずいぶん苦労されてきたね。バセドウ病眼症の症状が酷い人は、目の手術の後に甲状腺も取った方がいいんだよ。目の方も再発しかねない。なんでもっと早くに手術しなかったの?あなたの場合は手術によって得られるメリットの方が大きいよ。」と。「手術のことは全般的に任せてくれていいよ。首は神経が多くて決して簡単な手術ではないけど、僕がやればまず神経を傷つけるようなことはない。安心してくれていいよ。」と(おお、ゴットハンド!)。と、「手術が終わったら、自分の心臓の音が静かでびっくりすると思うよ」という言葉。これが決め手だった。その場で即決しました。
手術へ
前日午後に入院して当日は11:30から手術。時間にするとおおよそ1時間30分かな。
自分で歩いて手術室へ入って、事前検査で撮ったCT画像を診ながら「50gくらいありそうだな。普通の人が15〜18gだから3倍はあるねー。」などと先生たちが話していたのははっきりと覚えてる(リラックスしてるなーって思いながら見てた)。その後点滴から麻酔(ガスは使用しなかった)が入ってきてからは、ぱったりと記憶はない。
全身麻酔を経験したことがある人はわかるかもしれないけれど、麻酔から目覚める時は睡眠のそれとは別のもので、全く何もない「無」の状態から、はっと突然意識が表れる感じ。完全に覚醒するまでには時間がかかるから、もやーっとした感覚の中で、むりやり眼を開けるよう言われたり、確認の動作させられたりする。かなり面倒に感じながら応えていたように思う(思うというのは、本当に思っていたかどうかもはっきりしないから)。因みに以前の手術は10時間も麻酔をかけていたから、病室に戻った後の自分の記憶は実際とは全然違うものだったらしい。今回は、時間が短かったせいか記憶違いはなさそうだった...と、思うけどな。
リカバリールームと言われる集中治療室みたいなところに運ばれた後は、体が熱い(あとから聞いたらリカバリールームにエアコンがかかっていなかったみたいだけど、玉のような汗をかいた記憶があるから身体自体も熱かったんじゃないかな。)のと麻酔明けで気分悪いのとで必死だった。前の手術の時も一晩中吐いていたから、事前に麻酔科医の先生に相談していて、酔い止めを早めに使ってもらうように気づかってくれてたけども...ダメでしたね。今回も。翌日の朝までずっと吐き気は治らず...術後で一番辛かったのはこれかもしれない。全身麻酔はかなり個人差があるらしいから他の人はどうなんでしょうね。
私そんな状態だったんで、「いやー90gもあったよ。90gっていったらさ、前頭二枚目級だよー。」って、診察の時に先生に言われても、反応できなかった。先生ごめんね。前頭二枚目?なんだそれって、何言ってんのそれって(東は豊ノ島、西は安美錦です、はい)。
術後の家族への説明で「出血もなく神経を傷つけることもなく、キレイに取れましたよ」とのありがたい報告を、摘出した甲状腺を見せながら説明されたそう。うえー。家族気をつけて。本人でよかった。(ちなみに甲状腺はレバーみたいにそもそもが赤い臓器らしい。90gのレバー...)
翌日から
翌朝には早々に体を拭いてもらって、尿カテーテルを抜いて、車椅子でお手洗いに行けるようになったら病棟の部屋へと戻りました。絶食あけ(手術前日の21:00から固形物はダメで、朝8:00から水分もダメ。これも正直辛かった。)で楽しみにしていたお昼ご飯は、朝まで続いた吐き気のおかげで全然食べられなかった。本当に残念、とても残念。でもその後は吐き気はなくなって1日よく寝たら、夜には立ってちょっとした荷物の整理もできるようになったり、ご飯もしっかり食べれるようになりました。ご飯が食べれればこっちのものってくらい、メキメキ元気になってきました。睡眠と食事はいつでも大切ですね。
微熱や軽い頭痛はあったものの、意外なほどに傷は痛くなかったんですよね。これは本当にありがたかった。(痛み止めを点滴から入れると、また気分が悪くなる可能性もあったので。やだー)この手術特有の症状だと言われた、飲み込む時の喉の痛み(風邪のときの扁桃腺の痛みとよく似ている)と声の擦れはもれなくありました。これはしばらくすると治る一時的なものなんだろうなということは、自分でもわかったから不安はなかった(今現在も飲み込むときはちょっと痛い)。あと手術前日に、首の傷を庇うようにするから肩が凝るよと、湿布を渡されてたけどこれも本当。これはもしかしたら吐き気の次に辛かったかも。
傷のようす
傷は首の下の付け根のシワに沿って、横に10cm程度。に、傷に対して垂直にテープが7箇所。はい、これ絶対フランケン。このテープは一ヶ月剥がせないとのことで、これが一番嫌だなあと思ったとこです。見た目絶対こわいし。ストール必須生活スタートです(傷は紫外線もダメ)。傷をよく見るとメスで切っているだけあって、髪の毛くらいの細さに見える(実際にはテープに阻まれて全貌は見えないけどね)。吸収される糸らしくて抜糸はなかったです。
いろんな人の傷の経過の様子を写真で見せてもらったけど、本当に個人差があるようです。こればかりはまたそのうち経過を記事にしたいと思うけど、今の写真はさすがに公開自粛せざるおえません。
退院後の生活
術後5日で退院です。だいたいそれくらいが平均だそう。
その後の生活についてはなんの制限もないです。これにはびっくり。見た目はホラーなのに。十分な栄養と睡眠をとって、飲酒・喫煙(吸わないけど)OK、仕事OK(さすがに休みもらったけど)、旅行・飛行機OK、軽いストレッチならOK...。すごい。見た目はホラーなのに。
もう甲状腺はないので病気は完治だけど、今後は甲状腺が出してたホルモンを補う薬を飲み続ける必要があります。でもこれは0(ゼロ)から足していくものなので、落ち着いてきたら3〜6ヶ月くらいの通院でもいいとのこと。気をつけないことがあるとすれば、体重管理かな。今までのように食べていたら、ぷくぷくしてきちゃうのは確実です。でもちゃんと運動できるようになれば、それもさほど問題なさそう。早く身体動かしたいす。
と、いうわけで、今現在はかなり元気です。本当に。今日、アルコール解禁しちゃったし。ししし。
驚いているのは、本当に心臓の音が静かだということ。と、体感温度(今の季節はもうすでにガンガン扇風機を回していたから)。かなり穏やかな気持ちで過ごせています。普通の状態ってこんな感じだったっけ、と。
ありがたいのは、2回とも簡単ではない手術だったけれど、いずれも名医に巡り会えたこと。この年齢で2回も手術受けるってあんまりないような気がするんですよね。本当にありがたい。家族にも友人にも仕事関係の方々にも、本当に感謝しかありません。
治療法は人の状況それぞれで、特に手術をオススメしているわけでもありません。終わった今は、こんなことならもっと早くにやっておけばよかったという気持ちと、この10年があったからこそ決断できたんだという気持ち、どちらもあります。いろんな治療方法があるんだなと思っていただければ幸いです。
またそのうち経過やら目の手術ことやら書きます。たぶん、そのうちに。最後までお付合いいただいて、本当にありがとうございました。
※文中の「今」「今現在」は術後1週間後のことです。
記事作成に以下サイトの素材を使わせていただきました。
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